「旅のなかほど、山小屋で。」
Open 3/3~3/10 13:00-19:00
(Holiday Mon&Tue)
写真 中川彰
言葉 川内有緒
写真 中川彰
言葉 川内有緒
展覧会開催にあたり
戦士はみんな、死ぬ場所をもっとるんだよ。 忘れることのできん思い出にひたされたお気に入りの場所ってのは 、強力なできごとがその跡を残すところであり、 自分が不思議なものを見たところであり、 秘密が明かされたところでもあり。
そう、言ったのは、ドン・ファンというヤキ族の呪術師らしい。
中川彰は、初めて会った私に、その「ドン・ファンの教え」 という本について訥々と語り始めた。それは、 古代メキシコの流れをくむ呪師とペルー生まれの作家の対話を描いた、長大な本だった。それと呼応するように私は、 メキシコ北部の峡谷の中を走る人々、「タラウマラ」 について話した。
—ボールを蹴りながら、 何百キロも松明の明かりで走り続けるんだって—。
何時間か経ったころには、私たちはメキシコにいくことに決めた。 2004年の早春、東京の小さな店でのできごとだ。 その後も旅は、ぽつり、ぽつりと続いた。 神話を服に縫い込む民族「クナ」 に会おうとカリブ海を舟で渡ったし、「バウル」 と呼ばれる詩人達を探しに、バングラデシュにも向かった。
ねえ、ねえ、ドン・フアンの教えに書いたあった通り、死そのものも本当に“存在”なのかな。
それは、 人間みたいなものなんでしょう。
じゃあ、手でつかんだり、 触ったりできるの。
と今こそ中川さんに聞いてみたい。
「そうやなあ・・・」と、 いつもの関西弁で答え始めるのを待っているが、肝心の男は、 たくさんの旅の写真を残したまま、 どこかでまた旅を続けているようだ。
川内有緒